市野屋の酒造りPromise

感性、水、米、人の手。 そしてまた、感性。

はじめに市野屋の想いあり。 そして、美しい土壌が育んだ清らかな水、 その年々で選りすぐった米が米どころから届く。 わたしたちの蔵に日本酒の「材」が集まったあと、 人の手と感性が生きる。 精米、洗米、蒸米、麹づくり、酒母づくり。 醪、仕込み、ろ過、火入れ、貯蔵――。 すべての工程に蔵人の手業が生き、 杜氏の感性が唯一無二の酒を創造していく。 水、米、人の手による酒づくり。 先人たちの知恵への敬意と、 今を生きる杜氏と蔵人の感性への信頼。 それこそが市野屋の酒づくり。

同じ透明な水に見えて、 ここに流れる水は、様々な色を持っている。 居谷里水源、矢沢水源、 上白沢水源をはじめとする八箇所の水源。 人里に潤いをもたらす、 千曲川、天竜川、犀川、木曽川といった一級河川。 「仁科三湖」と親しまれる湖。 長い年月を経て、 様々な山肌をたどり、生まれ出た水は 軟らかい、硬い、凛々しい、甘い―― さまざまな味わいを表現してくれる。 水を選べるとは、なんて贅沢なことだろう。 選ぶということは、意思がある、ということ。 市野屋の意思をこの清らかな水が かたちにしてくれる。

清澄な水の流れる土地には、美味しい米あり。 北から南まで、「水どころ」には「米どころ」がある。 大町市がある長野では、 北アルプスの山々から美しい水が流れ、 里山に下って扇状地をつくり、 草花が咲き、虫たちが遊ぶ肥沃な土壌をつくった。 酒に適した銘柄も「山田錦」「ひとごこち」 「美山錦」「山恵錦」「風さやか」……と 数品種にも及ぶ。 空から日本を眺め見ても、北から南まで 美味しい米作りへの探求を続ける米農家がある。 思い描く酒のコンセプトを第一にすれば、 米の解はひとつではないとわたしたちは考える。 その年々でとれた米を目と鼻と口と手で確かめ、 水との調和もイメージしながら選びたい。 そうしてやっと思い描く作品に近づく。

酵母

麹菌が米から糖を生み、 その糖を酵母がアルコールに変えることで はじめて日本酒が生まれる。 また、発酵の段階で生まれる香りや さわやかな酸味も酵母の働きによるものだ。 つまり、酵母によって 日本酒に美味しさの差異が生まれる。 市野屋の真髄があらわれるからこそ、 手づくりにこだわりたい。 蒸米、麹、水で酒母をつくり、 そこから生まれる乳酸菌で酵母菌を育てる。 水と米。そして自然の力、 先人たちの知恵に敬意を表して。

生産本部長/能登杜氏

伊藤正和Masakazu Ito

1972年岐阜県生まれ。大学卒業後、2000年に三重県桑名市にある細川酒造株式会社に入社し、能登杜氏の高正一氏に師事し、わずか一年で杜氏に。10年勤務したのち、静岡県、山梨県の蔵元で杜氏としての技量をさらに研鑽。2019年に市野屋の杜氏に就任した。 「人の体を見る医者のように酒をつくる」が信条。優秀な医者はデータや数値だけでなく、顔色や表情からも体調を看ていくように、機械化による分析値だけに頼らず、目と鼻と口を使って醪の状態を察して、繊細な調整のもとに日本酒をつくっている。感性を錆びさせない秘訣は、自らの体を健やかにすること。大学時代は少林寺拳法で体を鍛え、今も日々、体づくりも習慣にしている。

杜氏

大塚真帆Maho Otsuka

1975年神奈川県横浜市生まれ。滋賀県立膳所高等学校卒業、京大農学研究科修士課程修了。在学中、所属していた作曲サークルの仲間との酒盛りで日本酒の奥深さに目覚め、酒づくりを生涯の仕事と決めた。2000年、京都伏見の蔵元、招德酒造株式会社に入社。江戸時代に確立された、生酛づくりに魅力を感じ、その伝統技法を復活させる一方、ラベルやボトルもデザインし、数々の賞を受賞した。 2022年、市野屋に入社し、生酛づくりの日本酒を担当。国内外の人々、老若男女に幅広く受け入れられる、現代的な生酛を追い求め、「自然ともう一杯、おかわりしたくなるような酒」づくりを日々探求している。家庭では二人のお子さんの良きお母さん。

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